透析外科

人工透析について

人工透析イメージ

腎機能は著しく低下すると、十分な濾過機能が果たせなくなり、体じゅうに老廃物が溜まって尿毒症(本来なら排出されるべき毒素や老廃物が血液中に蓄積することによって起こる一群の症状)になってしまいます。そのため、老廃物や毒素などの尿毒症物質を取り除いて、尿毒症を防ぐために必要になってくるのが、人工透析です。人工透析とは「腎不全の末期症状において、低下した腎機能を人工的に代理する治療」のことです。透析は、その治療内容から、容易に受け入れやすいものではありませんが、失われた腎機能を代替して体内環境を整え、これから先の生活、ひいては人生を充実させてくれる治療法です。当クリニックでは、この人工透析をより行いやすくするための外科的手術を含めた治療を透析外科にて行っています。透析治療でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

バスキュラーアクセスとは

当クリニックでは血液透析療法を行っています。血液透析とは、体内に蓄積された老廃物を機能不全となった腎臓の代わりに透析装置を使って取り除くというものです。その仕組みですが、まず患者様の血管から血液を毎分200ccほど抜き出します。抜き出した血液は透析装置のなかで浄化した後、その浄化した血液をまた患者様の血管へ再び戻すという流れになります。毎分200ccという血液を効率よく透析器に送り込むためには、血液を安全に体内から取り出せるよう、皮膚のすぐ下にたくさんの血液が流れている血管を作る必要があります。この施術をバスキュラーアクセスと呼びます。

日帰り手術が基本です

当クリニックでは、このバスキュラーアクセスに伴う外科的手術を行っておりますが、その方法というのはひとつではありません。主な治療法は以下の通りです。なお、いずれの手術・処置に致しましても日帰りで行うことを基本としておりますが、患者様の状態をみて関連病院である江東病院での入院治療を検討する場合がございます。手術についてお聞きしたいことなどありましたら、お気軽にご相談ください。

シャント作成(自己血管)

シャント作成(自己血管)は、バスキュラーアクセスによる外科手術の中で最も多くの患者様に取り入られている手法です。手術では、自己の前腕部のあたりを走る静脈と動脈をつなぎ合わせます。こうすることで静脈の中に勢いの良い動脈血が流れ込み、皮膚に近いところにある静脈が浮き出るほど太くなり、針が差しやすくなります。これで透析に必要な血液量を確保することができるようになります。手術時間は通常60分前後で、局所麻酔下に行います。

シャント作成(人工血管)

静脈が細かったり、詰まっているなど自己血管だけでは、シャント作成が困難な場合は、自己の動脈と静脈の間に人工血管を移植してシャントを作成します。人工血管は合成素材のチューブで、前腕部のあたりに埋め込みます。自己血管と同じような血液量を確保することはできますが、(人工)血管内の詰まりや感染に気をつける必要があります。透析の際は、人工血管に針を刺して透析することになります。手術時間は通常2時間前後で、局所麻酔下に行います。

経皮的血管拡張術(超音波ガイド下)

シャントは血液透析で使用している間に、その血管が狭く(狭窄)なることや、詰まったり(閉塞)することがあります。以前であれば、シャントを新たに作り直すことなどが必要でしたが、現在はシャント内で起こる狭窄や閉塞などは、その血管内にカテーテルを用いることで解消できるようになり、同じシャントを使用し続けることができるようになりました。この治療法をシャントPTA (Percutaneous Transluminal Angioplasty)と言います。このPTAとは経皮的血管拡張術の略称でもあります。カテーテルとバルーンを用いて、狭窄している箇所でバルーンを膨らませることで血管を良好に拡張させ血流を改善させます。超音波を使用し拡張箇所に直接、局所麻酔を行うことが可能ですので、痛みも少ないです。なお、当クリニックでは術前評価で造影剤を使用することもございますが、基本的には超音波ガイド下でシャントPTAを行うため被爆がなく患者さんの負担が少ないのが特徴です。その他に造影剤で写ってこない血管や、血栓(血の塊)によって閉塞してしまった血管もPTAにより開通する可能性がありその点も利点と言えます。閉塞してしまうには原因があり、定期的に診察を受けることをおすすめします。

シャント作成以外の施術

動脈表在下

シャントが作成できない場合や作成すると心臓に負担がかかる場合に行われる施術です。腕の奥深くにあるとされる上腕動脈を外科的に皮膚の直下に移動させて刺しやすくする方法です。ただしこの場合、抜き出して綺麗にした血液を戻すことができないので、血液を返すための静脈が別に必要となります。

カテーテル留置

カテーテル留置もシャント作成が困難である場合や小児透析などに用いられます。透析ができるように工夫された専用のカテーテルを頚の所や鎖骨下、鼠径部の静脈内に留置します。シャントトラブルの際や緊急時に使用します。